支払手数料は、振込手数料や決済手数料など、取引に付随して発生する経費を計上する勘定科目です。損益計算書(会社の1年間の収支をまとめた報告書)では「販売費及び一般管理費」に分類されます。
この記事では、支払手数料の定義から、混同しやすい勘定科目(雑費・租税公課・販売手数料)との違い、消費税の課税・非課税の判定方法、そしてシーン別の仕訳例までを順番に解説します。経理初心者でも迷わず処理できるよう、判断フローと金額入りの仕訳を用意しました。
支払手数料とは何か
支払手数料とは、商品やサービスそのものの対価ではなく、取引に付随して発生する費用をまとめて計上する勘定科目です。銀行に払う振込手数料や、カード会社に払う加盟店手数料、税理士や弁護士に払う報酬などが該当します。
損益計算書では「販売費及び一般管理費」(営業活動にかかった経費をまとめる区分)に含まれます。営業活動に直接関わらない手数料(借入に伴う保証料など)は「営業外費用」(本業以外で発生した費用をまとめる区分)で処理する場合もあるため、性質を見て判断しましょう。
支払手数料に該当する費用の例
- 銀行の振込手数料・口座維持手数料・ネットバンキング利用料
- クレジットカード会社の加盟店手数料
- 決済代行(Stripe、PayPal等)の利用手数料
- 税理士・弁護士・社労士などの専門家報酬
- 不動産の仲介手数料
- 海外送金の中継銀行手数料・為替手数料
ポイントは「誰に」「何のために」払ったかです。同じ「手数料」という名前でも、取引先や性質によって使う勘定科目と消費税の扱いが変わります。次のセクションで、間違えやすい勘定科目との違いを整理しましょう。
混同しやすい勘定科目との違い
支払手数料と名前や性質が似ている勘定科目は4つあります。「何のための支払いか」を基準にすると、どれで処理すべきかが判断できます。まずは一覧表で全体像をつかんでください。
| 勘定科目 | 性質(何のための支払いか) | 代表例 |
|---|---|---|
| 支払手数料 | 取引に付随して発生する費用 | 振込手数料、加盟店手数料、決済代行利用料 |
| 雑費 | 他の科目に当てはまらない少額の経費 | ごみ処理代、クリーニング代 |
| 租税公課 | 国や自治体に払う税金・手数料 | 印紙代、登録免許税、証明書発行手数料 |
| 販売手数料 | 販売を委託・仲介した対価(売上連動) | ECモールの出品手数料、マーケットプレイス手数料 |
| 支払利息 | 借入金に対する利息 | 銀行借入の利息、社債利息 |
それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。
雑費との違い
雑費は、他の勘定科目に当てはめにくい少額の支出をまとめる科目です。振込手数料や決済手数料は性質がはっきりしているので、金額が小さくても支払手数料で処理します。
雑費に入れてしまうと、月次決算の内訳が見えなくなります。監査や税務調査で「この雑費の中身は?」と聞かれたときに説明が難しくなるため、「性質が明確なら雑費にしない」が鉄則です。
租税公課との違い
租税公課は、国や地方自治体に払う税金や手数料に使う科目です。印紙代、登録免許税、証明書の発行手数料、住民票の取得費用などが該当します。
判断基準はシンプルで、取引先が公的機関なら租税公課、民間企業なら支払手数料です。たとえば「法務局に払う登記手数料」は租税公課、「銀行に払う振込手数料」は支払手数料になります。
販売手数料との違い
販売手数料は、商品やサービスの販売を他者に委託・仲介してもらった対価に使う科目です。売上金額に連動して発生するのが特徴です。
たとえば、Amazonや楽天に出品して売上の一定割合を払う手数料は販売手数料です。処理方法は費用計上が基本ですが、売上から控除する方法を採用する企業もあります。どちらを選んでも、社内で処理方法と摘要の書き方を統一しておくことが必須です。
支払利息との違い
支払利息は、借入金に対して発生する利息です。損益計算書では「営業外費用」に分類されます。支払手数料(販売費及び一般管理費)とは表示される場所が違うため、混同しないよう注意しましょう。
間違えやすいのが、信用保証協会の保証料です。保証料は借入に付随するコストですが、利息そのものではありません。保証料は支払手数料で処理するのが一般的です。
ここまでで勘定科目の選び方が整理できました。次に、消費税の課税・非課税をどう判定するかを確認しましょう。
消費税の判定方法(課税・非課税・不課税)
手数料の処理で最も間違いが多いのが消費税の区分です。同じ「支払手数料」でも、取引先と取引内容によって課税・非課税・不課税に分かれます。ここでは5ステップの判断フローで整理します。
5ステップ判断フロー
取引先は公的機関か?
→ はい:租税公課 / 非課税
(印紙代・証明書発行手数料・登録免許税など)
売上に連動する手数料か?
→ はい:販売手数料 / 課税10%
(ECモールの出品手数料・マーケットプレイス手数料など)
カード会社・信販会社への加盟店手数料か?
→ はい:支払手数料 / 非課税
(消費税法第6条・別表第二の「金銭債権の譲渡」に該当するため)
外国為替・海外送金の手数料か?
→ はい:支払手数料 / 非課税
(消費税法別表第二の「外国為替業務に係る役務の提供」に該当するため)
上のどれにも当てはまらない
→ 支払手数料 / 課税10%
(銀行振込手数料・決済代行利用料・専門家報酬など。手数料の大半がここに該当します)
非課税と不課税の違いに注意
非課税は「消費税の対象だが、制度上あえて課税しないもの」です。不課税は「そもそも消費税の対象外のもの」です(寄付金、損害賠償金など)。
手数料の処理では非課税が出てくることはあっても、不課税になるケースはほぼありません。ただし区分を間違えると消費税の申告額がずれるので、請求書の税率表示と照合して確認しましょう。
よく出てくる取引の税区分一覧
| 取引内容 | 勘定科目 | 税区分 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 銀行振込手数料 | 支払手数料 | 課税10% | 役務提供の対価 |
| ネットバンキング利用料 | 支払手数料 | 課税10% | 役務提供の対価 |
| カード加盟店手数料 | 支払手数料 | 非課税 | 金銭債権の譲渡(法別表第二) |
| 決済代行利用料(Stripe等) | 支払手数料 | 課税10% | 役務提供の対価 |
| ECモール出品手数料 | 販売手数料 | 課税10% | 役務提供の対価 |
| 印紙代・証明書発行手数料 | 租税公課 | 非課税 | 行政手数料 |
| 税理士・弁護士への報酬 | 支払手数料 | 課税10% | 役務提供の対価 |
| 海外送金手数料 | 支払手数料 | 非課税 | 外国為替業務(法別表第二) |
| 不動産仲介手数料 | 支払手数料 | 課税10% | 役務提供の対価 |
| 信用保証協会の保証料 | 支払手数料 | 非課税 | 保証料(法別表第二) |
判断に迷ったときは、契約書の記載内容と請求書の税率表示を照合してください。それでも判断がつかない場合は、税理士に確認しましょう。
税区分が分かったら、いよいよ実際の仕訳に入ります。次のセクションでシーン別の仕訳例を見ていきましょう。
シーン別の仕訳例(税抜経理方式)
ここからは、税抜経理方式での仕訳を6つのシーンに分けて紹介します。すべて金額を入れているので、実務でそのまま参考にできます。摘要の書き方もセットで示します。
税抜経理方式と税込経理方式
税抜経理方式は、本体価格と消費税を分けて仕訳する方法です。「消費税をいくら払ったか」が帳簿上で一目で分かるため、中小企業でも採用が多い方式です。税込経理方式(本体と消費税を合算して記帳する方法)を使っている場合は、「仮払消費税」の行をなくし、合計額で仕訳してください。
銀行振込手数料
銀行の振込手数料は課税10%です。
例:取引先への支払いで振込手数料660円(税込)が発生した場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料(課税10%) | 600 | 普通預金 | 660 |
| 仮払消費税 | 60 |
摘要例:三菱UFJ 振込手数料 課10
ネット明細や通帳のコピーを毎月保存しておきましょう。同じ月の取引の中から税率と金額が分かる書類を1点添えておけば、保存要件を満たせます。
クレジットカード加盟店手数料
カード会社への加盟店手数料は非課税です。差引入金の場合も、非課税という扱いは変わりません。
例:売上110,000円のうち、カード会社から手数料3,300円を差し引かれて入金された場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 106,700 | 売掛金 | 110,000 |
| 支払手数料(非課税) | 3,300 |
摘要例:VISAカード 加盟店手数料 非課税
補助科目でカード会社ごとに区分しておくと、決済代行(課税)との取り違えを防げます。
決済代行(Stripe・PayPal等)の手数料
決済代行の利用料は課税10%です。カード会社の加盟店手数料(非課税)とは税区分が異なるので注意しましょう。
例:Stripeから手数料3,850円(税込)を差し引かれて入金された場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 96,150 | 売掛金 | 100,000 |
| 支払手数料(課税10%) | 3,500 | ||
| 仮払消費税 | 350 |
摘要例:Stripe 決済手数料 課10
一番多いミスは、カード会社(非課税)と決済代行(課税)の取り違えです。補助科目を「決済代行」と「カード会社」で分け、摘要にも区分を書いておけば防げます。
ECモール(Amazon・楽天等)のプラットフォーム手数料
ECモールの出品手数料やマーケットプレイス手数料は、販売の委託に対する対価です。勘定科目は販売手数料を使い、税区分は課税10%になります。
例:Amazonの販売手数料5,500円(税込)が売上から差し引かれた場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 販売手数料(課税10%) | 5,000 | 売掛金 | 5,500 |
| 仮払消費税 | 500 |
摘要例:Amazon 販売手数料 課10
ECモールでは広告費や配送費など複数の費用が混在します。摘要に「手数料」「広告」「配送」などの種別を入れておくと、後から費用を分析しやすくなります。
行政手数料(証明書発行など)
行政機関に払う手数料は租税公課で処理します。税区分は非課税です。
例:法務局で登記事項証明書を取得し、600円を支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課(非課税) | 600 | 現金 | 600 |
摘要例:法務局 登記事項証明書 非課税
支払手数料に入れてしまうと、課税仕入(消費税の控除対象)に紛れるおそれがあります。「取引先が公的機関=租税公課」と覚えておきましょう。
海外送金・外国為替の手数料
海外送金の中継銀行手数料や為替手数料は非課税です。送金時に為替差損益が発生した場合は、別途「為替差損益」で処理します。
例:海外取引先への送金で、中継銀行手数料4,000円が発生した場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料(非課税) | 4,000 | 普通預金 | 4,000 |
摘要例:SMBC 海外送金手数料 USD建 非課税
摘要には通貨・為替レート・中継銀行の有無を書いておくと、期末の照合がスムーズになります。
専門家報酬(税理士・弁護士など)
税理士や弁護士への報酬も支払手数料で処理できます。税区分は課税10%です。ただし、報酬を支払う際は所得税の源泉徴収が必要です。
例:税理士に顧問料55,000円(税込)を支払い、源泉所得税5,105円を差し引いた場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料(課税10%) | 50,000 | 普通預金 | 49,895 |
| 仮払消費税 | 5,000 | 預り金(源泉所得税) | 5,105 |
摘要例:〇〇税理士事務所 顧問料 課10 源泉あり
源泉徴収を忘れると追徴課税の対象になります
所得税法第204条第1項により、税理士・弁護士・社労士・司法書士などへの報酬は、支払時に源泉徴収する義務があります。源泉所得税は、支払った月の翌月10日までに税務署へ納付します。納期の特例(従業員10人未満の事業者)を申請済みなら、半年ごとの納付で構いません。
不動産の仲介手数料(売却と購入で処理が違う)
不動産の仲介手数料は、売却時と購入時で処理が異なります。ここを間違えると経費計上の可否に直結するので、しっかり押さえておきましょう。
| 場面 | 勘定科目 | 税区分 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 不動産を売却したとき | 支払手数料 | 課税10% | 売却に伴う付随費用として経費計上できる |
| 不動産を購入したとき | 土地 or 建物(取得原価に加算) | 課税10% | 取得に要した付随費用のため、経費ではなく資産に含める |
| 賃貸の仲介 | 支払手数料 | 課税10% | 賃貸に伴う付随費用として経費計上できる |
例(売却):不動産売却時に仲介手数料550,000円(税込)を支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料(課税10%) | 500,000 | 普通預金 | 550,000 |
| 仮払消費税 | 50,000 |
摘要例:〇〇不動産 売却仲介手数料 課10
購入時の仲介手数料は経費にできません
不動産を購入したときの仲介手数料は、土地や建物の取得価額に加算して資産計上します。支払手数料として経費にしてしまうと、税務調査で否認される可能性があります。「売却=経費OK、購入=資産に含める」と覚えておきましょう。
仕訳のパターンが出揃いました。次は、インボイス制度や証憑保存など、税務面で押さえておくポイントを確認しましょう。
税務・インボイス制度の注意点
仕訳の正確さに加えて、証憑(しょうひょう=請求書や領収書などの取引を証明する書類)の保存方法とインボイス制度への対応も経理の仕事です。ここでは実務で特に注意が必要な3つのポイントを取り上げます。
インボイス制度と仕入税額控除
2023年10月に始まったインボイス制度では、仕入税額控除(仕入れや経費で支払った消費税を、納付する消費税から差し引ける制度)を受けるために、「適格請求書(インボイス)」の保存が原則必要です。保存期間は7年間です。
ただし、振込手数料のように1件あたりの金額が少額で、発生頻度が高い取引では、以下の簡便な方法が認められています。
| 方法 | 条件 | 保存すべきもの |
|---|---|---|
| 通帳保存 + 補足書類 | 条件なし(全事業者が利用可能) | 通帳orネット明細 + 同月内の税率・金額が分かる書類1点 |
| 少額特例(帳簿のみ保存) | 基準期間の課税売上高が1億円以下、 または特定期間の課税売上高が5,000万円以下 |
帳簿のみ(税込1万円未満の取引が対象) |
少額特例の適用期限は2029年9月30日まで
少額特例は経過措置です。2029年10月1日以降は原則どおりインボイスの保存が必要になります。今のうちに、証憑保存の社内ルールを整備しておきましょう。
振込手数料を売手が負担したときの処理
請求額から振込手数料を差し引いて入金される(振込手数料を売手負担にする)ケースがあります。このとき、処理方法は主に2つです。
| 処理方法 | 仕訳 | 必要な書類 |
|---|---|---|
| 売上値引きとして処理 | 売上値引 / 売掛金 | 返還の事実が分かる書類(返還インボイス) |
| 立替金として処理 | 支払手数料 / 売掛金 | 立替の根拠を示す精算書 |
どちらを採用しても構いませんが、あらかじめ契約と社内ルールで定め、月ごとに処理が変わらないようにしましょう。なお、税込1万円未満の売上値引きについては、返還インボイスの交付が免除されています。
摘要の書き方と社内ルールの整備
摘要は「あとから検索しやすくするためのメモ」です。最低限、取引先名・手数料の種類・税区分の3つを書きましょう。
| 取引 | 摘要の書き方 |
|---|---|
| 銀行振込 | 三菱UFJ 振込手数料 課10 |
| カード精算 | VISAカード 加盟店手数料 非課税 |
| 決済代行 | Stripe 決済手数料 課10 |
| 行政 | 法務局 登記事項証明書 非課税 |
| 専門家報酬 | 〇〇税理士事務所 顧問料 課10 源泉あり |
補助科目は取引先ごとに分けておくと、月次決算や監査で内訳を聞かれたときに即答できます。証憑保存のタイミングや方法も、会計ソフト内で統一しておきましょう。
ルールが整ったら、次は手数料そのものを減らすコツを見てみましょう。
支払手数料を減らす3つのコツ
振込手数料は1件あたりの金額は少額ですが、年間で積み重なると大きなコストになります。たとえば月50件の振込で1件660円なら、年間で396,000円です。以下の3つの方法で削減できます。
1. 振込をまとめる
同じ取引先への振込を月1回にまとめれば、振込件数がその分減ります。取引先との支払条件を見直し、月末一括払いに変更できないか交渉してみましょう。
2. ネットバンキングを活用する
窓口やATMよりもネットバンキングの方が振込手数料は安くなります。多くの銀行で1件あたり100〜300円程度の差があります。月50件なら、年間で6万〜18万円の差になる計算です。
3. 振込手数料の安い銀行を選ぶ
ネット銀行は従来の都市銀行・地方銀行と比べて振込手数料が安い傾向にあります。法人口座の振込手数料を銀行ごとに比較し、メインバンクの見直しも検討しましょう。ただし、取引先との関係や融資条件も考慮して判断する必要があります。
削減した手数料は利益に直結します
売上を増やすのと違い、経費の削減はそのまま利益になります。手数料の見直しは地味ですが、確実に効果が出る施策です。年に一度、振込件数と手数料の合計額を確認する習慣をつけておきましょう。
コスト削減のコツを押さえたら、最後に監査で指摘されやすいミスを確認しておきましょう。
監査で指摘されやすいミス4選
手数料の処理で監査や税務調査で指摘されるパターンは、ほぼ決まっています。以下の4つを月次チェックで確認するだけで、指摘のリスクを大きく減らせます。
1. 雑費への一括計上
性質がはっきりしている手数料まで雑費に入れてしまうケースです。雑費の残高が膨らむと「内訳を説明してください」と必ず聞かれます。
対策は、「手数料は支払手数料」「行政系は租税公課」「販売委託は販売手数料」を社内マニュアルに明記して運用することです。
2. カード会社と決済代行の混同
どちらも差し引かれて入金される点は同じですが、税区分が違います。カード会社の加盟店手数料は非課税、決済代行の手数料は課税です。
対策は、補助科目を分けて摘要に「カード会社」「決済代行」と入力することです。入力時に区別すれば、後から気づいて修正する手間がなくなります。
3. 行政手数料を支払手数料で処理
行政機関に払った手数料を支払手数料で処理すると、課税仕入(消費税の控除対象となる仕入れ)として計上してしまうおそれがあります。消費税の申告額がずれる原因になります。
対策は、会計ソフトの科目選択欄に「行政系=租税公課」の注釈を常設し、証憑ファイル名に「行政」を含めることです。
4. 非課税と不課税の取り違え
非課税は「消費税の対象だが制度上課税しないもの」、不課税は「そもそも消費税の対象外」です。この区分を間違えると、消費税の集計結果がずれます。
対策は、請求書の税率表示と取引の性質を照合し、前のセクションで示した5ステップ判断フローに沿って確認することです。
よくある質問
支払手数料の処理でよく寄せられる疑問をまとめました。
Q. 支払手数料と販売手数料はどう使い分けますか?
A. 支払手数料は振込手数料など取引に付随する費用、販売手数料はECモールの出品手数料など販売の委託・仲介に対する費用です。「売上に連動しているかどうか」が判断基準になります。
Q. クレジットカードの加盟店手数料が非課税なのはなぜですか?
A. カード会社の加盟店手数料は、消費税法別表第二で「金銭債権の譲渡」にあたるとされており、非課税取引に該当します。決済代行(Stripe等)の手数料は役務提供の対価なので課税10%です。
Q. 振込手数料は1件ごとにインボイスが必要ですか?
A. 原則はインボイスの保存が必要です。ただし、通帳保存+税率が分かる書類1点の方法や、少額特例(基準期間の課税売上高1億円以下の事業者は税込1万円未満なら帳簿のみ)で対応できるケースが多いです。少額特例は2029年9月30日までの経過措置です。
Q. 支払手数料の消費税区分を間違えたらどうなりますか?
A. 課税と非課税を取り違えると、仕入税額控除(経費で払った消費税を差し引ける制度)の計算がずれます。消費税の申告額に影響し、税務調査で過少申告と判断されれば追徴課税の対象になります。月次決算のタイミングで税区分の確認を行いましょう。
Q. 信用保証協会の保証料はどの勘定科目で処理しますか?
A. 支払手数料で処理するのが一般的です。借入に付随するコストですが利息ではないため、支払利息には該当しません。税区分は非課税です。
まとめ
手数料の処理は「誰に払ったか → 売上に連動するか → 税区分」の順で確認すれば、迷わず判断できます。
| 取引先 | 勘定科目 | 税区分 |
|---|---|---|
| 銀行 | 支払手数料 | 課税10% |
| カード会社 | 支払手数料 | 非課税 |
| 決済代行(Stripe等) | 支払手数料 | 課税10% |
| ECモール | 販売手数料 | 課税10% |
| 行政機関 | 租税公課 | 非課税 |
| 専門家(税理士等) | 支払手数料 | 課税10%(源泉徴収あり) |
| 海外送金 | 支払手数料 | 非課税 |
まずはこの7パターンを基本ルールにしましょう。摘要は「取引先名 / 手数料の種類 / 税区分」で書き方を固定し、補助科目は取引先ごとに分けます。
月次チェックでは「雑費に入れていないか」「カード会社と決済代行を混同していないか」「行政手数料を支払手数料にしていないか」の3点を重点確認。これだけで監査対応の手間は大きく減ります。